『ことばと国家』 | ホビットの読んだ本

『ことばと国家』



著者: 田中 克彦
タイトル: ことばと国家

 岩波新書『ことばと国家』田中克彦(1981年初版1994年第25刷)
 今の目で見るとそんなにショッキングには感じない。

・母国語と母語の違い
・アルザス/エルザス地方で使われている言葉

とか基本的なこと。
 高校の世界史レベルで分かることよりは少し知識が進むけど。

 しかし「言語的支配の独善をさらけ出した、文学などとは関係のない、植民者の政治的扇情の一篇でしかない。」というのはいかがなものか?

 「言語的支配の独善をさらけ出した」というのはそのとおりだと思います。
 しかし、小説というのは、必ずテーマがないといけないと習ったのだけど、「フランス語の世界征服は素晴らしい」というテーマだといけないのかなあ? 

 『西部戦線異常なし』は反戦小説だからいい小説。というのはだれでも思うのかしら? 小説として出来がいいのとテーマに賛成とは、切り離しにくいとは思いますが。

 『最後の授業』は「プロイセンが憎くて、アルザスを返せ」という動機で書いたものなんでしょうが、主人公の名前はフランツだし、フランス語がかれの母語でないことも隠していないし、感動させる上手いつくりの話ではあると思います。

 まあ、ちょっと世界史や言語の知識があると感動しにくいのも確かだけど、それはテーマが気に食わないというだけも問題で、それが「文学」かいなかを決めるものなのでしょうか?